噛むこと・食べることとセロトニン

かむこと

よく耳にするセロトニン。

幸せホルモンと呼ばれることもありますが、どんなふうにわたしたちの体の中で働いているのでしょうか。
セロトニンは、食事や生活で増やせるのでしょうか。
今回は、噛むことや食べ物との関係を中心に、今わかっていることを見ていきます。

1 セロトニンについて

セロトニンとは

セロトニンは、気分や睡眠、食欲など、私たちの心と体のさまざまな働きに関わる神経伝達物質です。

脳の中では、気分の安定や感情の調整などに関わっています。また、ドーパミンやノルアドレナリンなど、意欲や集中、覚醒などに関係する神経伝達物質とも互いに関わりながら働いています。

セロトニンは、睡眠にも関係しています。夜になると、脳の松果体ではセロトニンを材料として、睡眠を促すホルモン「メラトニン」が作られます。

そのほかにも、セロトニンは食欲や痛みの感じ方、体温調節など、さまざまな体の働きに関わっています。

セロトニンの多くは腸にある

実は、体内にあるセロトニンの約90%は、脳ではなく消化管に存在しています。

腸のセロトニンは、腸の内容物を送り出す「ぜん動運動」など、腸の働きを調節する役割を担っています。

このセロトニンの多くは、腸の粘膜にある細胞で作られています。そして、腸内細菌や腸内細菌が作り出す物質も、セロトニンが作られる仕組みに影響を与えていることがわかってきています。

一方、脳の中で働くセロトニンは、食事からとる必須アミノ酸の「トリプトファン」を材料として、脳の中で作られます。

そのため、腸にあるセロトニンと脳のセロトニンは、同じセロトニンでも、いったん分けて考える必要があります。腸で作られたセロトニンが、そのまま脳に運ばれることはありません。一方で、腸内細菌はトリプトファンの代謝などに関わっており、腸と脳はさまざまな仕組みを通して影響し合っていることがわかってきています。

腸内環境と心や脳との関係については、現在も研究が進められています。

2 噛むこととセロトニン

「噛むこととセロトニンが関係しているの?」と疑問に思う方もおられるかもしれません。噛むことは、一定のリズムを繰り返す運動の一つです。現時点の研究では、こうしたリズム運動がセロトニン神経の働きと関係している可能性があると考えられています。

20分間ガムを噛んだ人を調べた研究では、血中セロトニンの増加や痛み反応の軽減、前頭前野の活動の活発化などが報告されています。

ただし、「噛めば脳内のセロトニンが増える」とまでは、まだ言い切ることはできません。それでも、よく噛むことは脳への刺激にもなり、脳の働きに良い影響を与える可能性があります。

3 セロトニンの材料になる食べ物

セロトニンを作る材料として大切なのが、必須アミノ酸の「トリプトファン」です。

トリプトファンは、大豆製品、乳製品、魚、肉、卵、ナッツ類など、さまざまな食品に含まれています。ただし、トリプトファンを多く含む食品をたくさん食べれば、そのまま脳内のセロトニンが増えるというわけではありません。

トリプトファンは、他のアミノ酸と競争しながら血液脳関門を通って脳に入ります。そのため、脳への入りやすさは、単純にトリプトファンをどのくらい摂ったかだけでは決まりません。

セロトニンというと、よく名前が挙がる食べ物がバナナです。バナナにはセロトニンそのものも含まれていますが、それがそのまま脳に運ばれて、脳内のセロトニンになるわけではありません。一方、バナナには糖質をはじめ、カリウム、食物繊維、ビタミンB6など、さまざまな栄養素が含まれています。セロトニンを増やす「特別な食べ物」と考えるよりも、いくつかの栄養素を一緒にとれる食品の一つ、と考えるとよいでしょう。

脳でセロトニンが作られるためには、材料となるトリプトファンだけに注目するのではなく、さまざまな食品を組み合わせて、バランスよく食べることが大切です。

4 まとめ

いかがでしたか。

セロトニンの役割から始まり、セロトニンの材料になる食べ物についてまとめてきました。

「これだけ食べれば大丈夫」という食べ物があれば簡単ですが、やはり心と体の健康のためには、さまざまな食品を組み合わせて、バランスよく食事をとることが基本です。

そして、食事の内容だけでなく、よく噛んで味わいながら食べることも大切にしたいですね。

毎日の食事の中で、できることから少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。

それでは次回は、「深呼吸のいろいろ」についてお伝えしたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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